海外ドラマを観ていてこんな疑問を感じたことはありませんか?
「1話目は面白かったのに2話目からつまらなくなった。」
「1話目のできが良すぎる気がする。」
実はそれ、思い込みではなく実際にできがいいんです。
日本ではドラマは第1話目とカウントしますが、アメリカではエピソード0またはパイロットと呼ばれ本編シリーズとは別扱いになることがあるんです。
そうです。いわゆるパイロット版と呼ばれるものになりますが、なんのことなのか今日はご紹介します。
アメリカドラマのパイロットとは?
パイロット版または、パイロットエピソードとは、ドラマプロデューサーがハリウッドのテレビ局に作品を売り込むために製作するエピソードのことを言います。
つまり、「わたしはこれからこのキャストとこんなストーリーのドラマが作りたい」というプレゼン資料を兼ねているんです。
当然パイロットのできをみて、それをシリーズ化するかどうかが決まりますので、かなりの力作になります。
パイロット版は本編とは続き関係にない独立したストーリーになる場合もあります。
ではなぜそのような方法で売り込むのか。その1番の理由は制作費です。
日本のドラマの制作費は平均3,000万〜5,000万円と言われていますが、アメリカは平均10億円と言われています。
そのため失敗は絶対に許されません。
せっかく作っても視聴率が悪くてボツになったら、10億円をドブに捨てることになりかねませんので、まずパイロット版を製作してテレビ放映します。
そこで視聴者や批評家の反応をみて、第2話目を制作するかどうかを決めていきますので、パイロット版のできがいかに大事かお分かりいただけるかと思います。
なぜ「パイロット」と呼ぶのか?
pilotという単語にはもともと、「案内する」「試験的に試みる」という意味がありますので、ズバリそのままの意味といえます。
しかし同時に、ドラマ1シーズンを飛行機の航行に例えて、それをうまく飛ばせるパイロットなのかという意味にもかけているようです。
ドラマが途中打ち切りになれば当然、失速という表現を使いますのでやはりここにもアメリカ人らしいユーモアがあるといえますよね。
変化するパイロット版
パイロットのできがよくても、流行やそのときの世界情勢さえも影響してしまい、お蔵入りしてしまう作品も少なくありません。
では、実際にどれぐらいの作品が世に出るのか。
アメリカにはABC、NBC、CBS、FOXと俗に「4大ネットワーク」を呼べるテレビ局がありますが、その4つだけでも年間おおよそ70〜100本ほどのパイロットが制作されています。
その中で世に出る、すなわち第2話目が製作されるドラマは約1/10と言われています。
1/10ですよ?本当に厳しい世界ですよね。
一生懸命作っても世に出るのがわずかに1/10では門が狭すぎて、制作者がモチベーションを維持できうえに非効率であり、これがテレビ離れの原因だという批判も多く、ハリウッドではたびたび議論されています。
そんな中でパイロット制作に大きな変化が訪れています。
それは近年、テレビ界に進出してきた、NetflixやHuluなどのストリーミング配信会社がもたらした大きな波です。
これらの会社は自社製ドラマにも力を入れており、海外ドラマ界の頂点を決めるエミー賞にも多数ノミネートされ、受賞もしています。
そんな大ヒットドラマを世に送り出しているにも関わらず、パイロット版を作成していません。
では、どうしているのかというと・・・各社のユーザーデータを使っているんです。
会員がどのような監督やジャンルのドラマを好むのか。またどのような時間帯に観ているのかなど自社のデータを徹底的にリサーチして、好まれる作品を制作しているわけなんです。
徹底したデータ戦略は、21世紀らしい新しい試みと評されており、これによって今後はパイロット制作が減るのではないかと言われています。
パイロット版も楽しんでいきましょう!
今回は海外ドラマのパイロット版についてご紹介しました。
今わたしたちが目にしているドラマは、厳しい試練をパスしてきた作品だということを念頭にドラマの第1話またはエピソード0を観てみると、また違う角度で作品を楽しめると思います。
それでは、また。Peace Out!